他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:037 技術に敬意を

社内SEのOさんは数少ない技術者で、普段はPC関係の“なんでも屋”として、周囲から何かと質問される日々。しかし、その内容がだんだんと専門外になってゆき……。

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“業務外”の仕事

OさんはメーカーA社のシステム部門で働く、社内SE。スリム化が進むA社のシステム部門は、Oさんの他にベテランの上司と、総務とかけ持ちで補助的な仕事をしてくれる女性社員がひとりという状態。

このように人数が少ない分、新人時代からOさんへの期待と負担は大きく、実務で揉まれながら経験を積んでいったのでした。

しかし、Oさんが仕事を覚えるに従い、ありがたくない仕事も増えていきます。外部に納品する仕事と違い、社内で使うものだけに「ここが使いにくい」「あそこがダメ」と延々とダメ出しが続くのです。契約を交わした仕事ではなく、同じ会社の社員同士。そんな甘えもあって、メンテナンスばかりが、いつ終わるとも知れず続いていきます。

また、少人数ということもあり、最初から作業を明確に分担していなかったため、設計もやればプログラムもやれば、テストも1人ですることに。

それだけではありません。他部署の社員からは、ちょっとした“業務外”の作業まで気安く頼まれてしまいます。例えば、内線で別フロアの社員に「ちょっと来て」と呼び出され、階段を息せき切って駆けつけると、「メール、文字化けしてるんだけど、どうしたら読める?」などという、SEの仕事とは言えないような雑用

社員の方も「社内にプロがいるから」という甘えた気持ちが産まれるのか、「わからないことがあったら、O君に聞け」と頼り切っています。これにはOさんも悲鳴をあげ、「どうしてもわからなかったら仕方がないですけれど、ちょっと検索すればわかることもありますから」とやんわり注意したのですが、

「えー、だってO君に聞いた方が早いもん」

知っている人に聞くことが当たり前、何も不思議ではないという反応をされ、げんなりしてしまいます。

社内SEの宿命

あるときなど、「子供が産まれたからハガキを作りたいんだけど」と先輩社員の私用のために、画像処理まで依頼されてしまいます。そういうことは専門外でやったことがないとOさんは断ったのですが、「O君はプロじゃん、できるよ!チャチャッとやってよ!このソフトなら簡単なんでしょ?」と押し付けてくるのです。

Oさんは「仕事が立て込んでいて」と言い訳し足早に立ち去ったのですが、その後もこの社員はOさんの顔を見れば、「ねえ、いつハガキ作ってくれんの?」と声をかけ続け、追いすがり、それでも逃げ続けるOさんに「なんでもできない、できないでは仕事の幅狭めるよ!」と上から目線で、トンチンカンな叱責をしてくるのです。

こんな日々に疲れ果てたOさんは、自分の気持ちを分かってくれる数少ない理解者として、上司を相手に愚痴を漏らします。

「みんなシステムの社員をパソコンの“なんでも屋”か何かだと思ってるんじゃないですか?ユーザーサポートに電話すればいいようなことまで何でも聞くんですよ。それも呼びつけて」

上司は不満が爆発しそうなOさんとは対照的に、極めて静かにOさんの話に耳を傾けています。この仕事を8年続けているベテランだけに、すでにその手のトラブルに関しては達観しているような感があります。

「うん。でもそれだけO君が頼りにされてるってことでもあるな」

「そうかもしれませんが……敬意が足りないんですよ!自分が知らないことを知っている人間への敬意が。だからこんなにイライラするんじゃないですか」

Oさんは静観を保つ上司の態度に、不甲斐なさすら感じていました。そして、自分の未来予想図をそこに見てしまったのです。

「このままここに残ったら、この人みたいになってしまう」

そう焦ったOさんは転職の意思を固めたのでした。

覇気のない上司の態度に業を煮やしたOさん。同業者=理解者が多いソフトウェアハウスへの転職を試みるのだが……。
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文・イラスト:
山本ちず

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