他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:040 縁と信頼

同業提携企業の廃業を受けて、同社の社員を面接することになったA社。信頼していた企業の社員ということもあり、全員採用してもいいぐらいの気持ちだったのだが……。

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「お断り」続々

提携企業B社の廃業を受けて、同社の社員を大量に採用することになったA社。人事担当Sさんは、大忙しで面接日程を組んでいくことになりました。

社長から「面接した全員を採用してもいい」との言葉をもらっていたとはいえ、なかなか上手くいかないのが現実。A社では、こちらさえよければ面接に来た15人全員を採用できると思っていたのですが、「申し訳ありませんが、御社の社風に馴染めないような気がして」と逆に断られるケースが出てきたのです。

同じ仕事をしてきた“同僚”的従業員とはいえ、やはり会社の雰囲気や給与体系などには違いがあります。話を詰めていったところ、中途採用では給与ダウンが避けられず、元からいる社員と差がつくことを嫌った人から「どうせならまったく違う、新しい環境に行きたい」と物別れに終わったことも。

また、面接には複数の担当者が手分けしてあたり、丁寧な対応を心がけてはいるものの、中には「拾ってやる」という意識が抜けない担当者もいたらしく、面接の場で双方のプライドが激突。「この人と同じ職場にいるなんて、考えられない。ずっと見下されそう」とキッパリ断られたり。他にも、

「すぐに転職しないと、と思ったのですが、この機会に少しまとまった休暇を取ろうと思いまして……」

このように気が変わったと辞退する人も出てきて、結局採用に至ったのは半分以下の7人にとどまったのでした。それでも、ある程度まとまった人材を確保できたことで、A社では満足のいく採用活動となり、Sさんもほっと一安心したのでした。

B社からA社に移った7人は、またそれぞれの道をたどります。1人はあっという間にA社に馴染んで、元からいたような顔になりました。1人は仕事が安定したことで、付き合っていた彼女と結婚に踏み切れると喜び、ヤル気を発散し目立つように。1人は、入ってみた後で、やっぱりここは合わないとすぐに辞めてしまいました。残りの4人は極めて大人しく、戸惑いながらも上司の指示に従う、ごく普通の転職者の姿を見せていました。

そうして、この6人は採用後しばらくの研修期間を経て、配属先に散っていきました。しかしここで、大人しいごく普通の転職者とみられていた4人のうちから、とんでもないトラブルを起こす問題社員が出てしまったのです。

転職者の素性は?

その人物とは、営業部に配属になった某氏。極めて大人しい性格で、アグレッシブなところもあったB社でよく勤め上げられたと思うほど。そんな某氏が、客先からの帰り道に車で接触事故を起こしてしまったのです。それだけならいざしらず、口論になった相手のドライバーを道路に突き飛ばし逃走してしまったのです。奇跡的に相手に怪我はなかったものの、極めて危険性が高い事件ということで警察に通報され、事件は一気に明るみに。某氏は一転追われる身に……。

後日、事件になったことに驚いた某氏が自首し、事件は決着したのですが、A社からは解雇されてしまいます。A社でも「あんな大人しい人が……」「キレたらどうなるかわかんない人だったんだよ、きっと」と大騒ぎに。

また、逃げたことが災いして地元でニュースになってしまい、現場上司はこの社員が出入りしていた得意先や仕事先を一件一件回り、説明と謝罪を繰り返すことになりました。

「まだ仕事らしい仕事をさせていないうちから、こんな問題を起こすなんて。入社して少しとはいえ、うちの社員として世間はとらえるだろうし、まったく高くついた採用だよ」

憔悴しきった営業部門の責任者から、愚痴のひとつも漏らされるとSさんも身の置き所がありません。社内からも「採用基準はどうなってたの?」と突き上げられ、人事部としても動かざるをえなくなります。今回の採用のうち残った5人についてもう一度調査をすることに。さしあたって元の勤務先のB社に勤務態度や人となりを問い合わせてみたところ……

「この人は内向的ですがスキルはなかなかでした。この人は他人には厳しいところはありますが……」

スラスラ過去の評価が出てきたのは3名のみ。残りの2名については、

「実は、この人たちはごく最近抱えた人材でして……」

景気が悪くなり、社員に逃げられることが増えたB社は人手不足に陥り、派遣社員に仕事を任せることが増えていました。そして、そうした派遣社員の中から、調べる事もせずあわてて採用した社員が数人いたというのです。例の某氏もその1人。

派遣として活動してきたので、勤務先に合わせるのはうまかったようです。

「仕事は問題なくこなしておりましたが、社長がバタバタと採用してしまったので、どういう人となりかは正直なところ……」どんな性格で、誰と親しくしていたかなど、パーソナルデータは全く不明だったのです。

そしてまたA社でも、提携していたB社の社員だからと、深く確かめることもせずに採用していたというのが実情だったのです。

「縁を信頼しすぎるのは怖いな……」問い合わせの電話を置いたSさんはつくづくそう思っていました。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

採用時の「調査」

以前は、住居・宗教・犯罪歴・いかがわしいアルバイト経験の有無など、微に入り細に至った調査をしたようですが、現在では個人情報保護法の観点から、身元調査がタブーになりました。しかし、金融・マスコミ・航空会社など、身元のはっきりした人物を採用したがる企業では、応募書類の記載事項以外について根掘り葉掘り聞いてくることもあるようです。

これでサクセス!

ミスマッチ回避

最近では、勤務態度や退職時のトラブルの有無などについて調査ができない代わりに、面接でトコトン話し込むことでミスマッチを回避しようとする傾向が強いようです。前職の在籍期間が短い場合、「職場で人間関係に悩んだことはありますか?」「上司や人事は、辞めるときに何か言っていましたか?」といった質問をされることもあるので要注意。

文・イラスト:
山本ちず

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