他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:043 ジャパニーズ・スタイルの職場

成果主義の企業で走り続けることに疑問を感じたFさん。将来のあるべき姿を求めてピンとくる企業を探すが……。

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定住の地を求めて

ひところは日本の悪しき風習のようにとらえられていた、年功序列制度。「能力に関係なく収入がアップしていくなんてナンセンス」「人件費の無駄」などと叩かれていましたが、最近の若者の間では安定した勤務を希望する人が多く、この制度も「まんざらでもない」と見直されつつあるとか。

営業・Fさんの勤務先は、一言でいえば日本的年功序列とは真逆の、外資系風のクールで自由なフンイキの職場。デスク環境は1人ひとり独立ブースを与えられ、ミーティングもセンターのテーブルにサッと集まり、サッと解散。年齢は関係なく、成果第一主義。アフター5の付き合いや会社のイベント、朝礼などは皆無で、見る人が見れば仕事だけに集中できる、恵まれた環境でした。

しかし、Fさんは次第に窮屈さを感じるようになります。個人主義・成果主義に魅了されて入社したものの、気力が衰えたときなどにふと募ってくるのは、不安感。

「いつまでも若いときのように気力・体力で仕事ができるワケではない。先々のことを考えると、仕事のステージを年齢に応じてウマくあげていける職場の方がいいのではないか……」自分が、10、20年先もこの会社で仕事をしているとは到底思えなくなってきたのです。

それに加え、学生時代スポーツに勤しんでいたFさんは、元来チームでひとつの目的に向かって力を合わせたり、長所短所をお互い補いあう関係を求める部分があります。そして今、その感覚が言いようもなく懐かしく感じるようになってもいました。

というわけで、転職することを決めたFさん。理想とした職場の条件は、

・人間関係が良く、チーム意識が高い

・平均年齢が高く、長く勤め易い

・中途採用者が浮かない

の3点でした。

雰囲気のいい職場

とはいえ、転職情報誌をひっくりかえし、転職サイトはウォッチしたものの、人間関係や中途採用者の扱いまで、求人記事ではなかなか分かりません。

1つひとつ当たってみる他ないと、平均年齢がそこそこ高く、「社員の仲が良い」「アットホームな雰囲気です」といったコメントを掲載していたA社をまず選んで、応募することを決めました。

「ウチとしても長く勤めてくれる人が欲しくてね」A社の面接に出かけたFさんを迎えたのは、採用担当のあたたかい言葉でした。

「ウチは一度勤めるとみんな長いので、中途採用はあまりしてこなかったのですが、2007年はご多分に漏れず定年になる人が多くて。それで踏み切ったんですよ」

確かに、採用に至る経緯も納得できます。

「ウチは雰囲気の良さが自慢でしてね」

実際、企業HPで確認したところ、社長以下社員全員が1枚の写真に収まっていたり、笑顔の社員が多数登場してコメントを述べたりしていました。

「変な派閥もありませんから、中途採用だからといって変な扱いを受けたりすることはないはずです。その点は安心してください」と、あくまでもFさんを気遣ってくれる担当者。

A社側も、厳しい成果主義の元で実績を残してきたFさんのキャリアを高く評価。また、「退職まで勤められる企業を」という腰を落ち着けた理由も気に入ったようで、双方の希望が合致。めでたく、A社と話がまとまったのでした。

そして、初出社の日。Fさんを紹介した後、社長は口を開いてこう言いました。

「非常に優秀なFさんを迎え、我が社の“家族”がまたひとり増えました……」

何気ない一言と思われた社長の「家族宣言」が、次第にFさんを追いつめていくことに……。
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文・イラスト:
山本ちず

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