他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:044 ジャパニーズ・スタイルの職場

離職率の低いA社に転職したFさん。社内のイベントや宴会にも積極的に参加し職場に馴染んでいくが、彼を見守る上司たちの視線は……。

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“転職”のイメージ

成果主義の将来に不安を感じ、安定した昇進システムを誇るA社に転職したFさん。転職初日に社長から「新しい我が社の家族」と紹介されたように、社員同士の関係は予想以上に密な職場でした。

たとえば、小さな社員食堂では座る場所が部署ごとに決まっていたり、持ち回りでおやつを用意したり。社内行事も多く、草野球や社員旅行、ちょっとした打ち上げの宴会など、イベント多数。

腰を落ち着ける覚悟をしたFさんも、学生時代を思い出して野球サークルに入ることに。最初の試合でタイムリーを打ち勝利に貢献したりと、新生活のスタートは好調でした。

この分ならFさんが転職に際し希望した条件のうちの1つ、

・人間関係が良く、チーム意識が高い

にまさにピッタリと言える職場でした。しかし一方、残りの2つ

平均年齢が高く、長く勤め易い

中途採用者が浮かない

になると、ちょっと疑問視したくなる出来事が起こったのでした。

事の起こりは50代のある上司との雑談でした。

「F君も転職大変だったでしょう?給料とか随分落ちたんじゃない?」

Fさんは、それほどのダウンではなかったと正直に説明。しかしこの上司、「いやいや、そうは言うけどさぁ……長い目でみれば結構違ってくるよ?」とか「せっかく入った会社を辞めるなんてもったいないことしたねえ」とか、どこか“転職”に偏見を持っている様子。Fさんがどれだけ説明しても、結局受けつけないのです。反論はいくらでもしたいFさんでしたが、転職したばかりでムキになって論争したところで、評判が落ちるだけ。

「あの人は自分自身は転職する気がないし、ずっとひとつの企業で過ごしているからだろう」

こう考えて、個人的な価値観の違いだと、気にしないよう受け流したのでした。

再チャレンジ支援?

ところが、この上司との会話の後ほどなく、Fさんは社長のこんな発言を聞いてしまいます。

「政府の再チャレンジ支援にならうようですが、うちも及ばずながら中途採用を始めまして」ある来客者との会話らしいのですが、たまたま社内で通りかかったFさんの耳がキャッチ。自分のことだとハッとして聞き入っていると、「一度失敗した者にも救済がなくちゃいけない」と社長はハッキリと口にしました。

一見、Fさんのような転職者を受け入れているように見えて、実はFさんの前職を“失敗”ととらえている社長。Fさんは自分のスキルやキャリアを認めてもらって転職できたと思っていましたが、社長にとっては上から救いの手を差し伸べたつもりだったのです。この認識の差にFさんは愕然とします。

さらには転職に対する意識が古い上司たち。末長い勤務を願って平均年齢の高い職場を望んだFさんでしたが、高年齢の社員ほど採用の現状を知りません。

「なにか大失敗して辞めてきたのでは?」「どうせ生え抜きの社員に比べると、昇進も遅い」転職に関するこんな偏見を持った上司は、少なくなかったのでした。

Fさんが周囲とのギャップに悩みはじめたある日、デスクに小さな箱が回ってきました。中にはお札や小銭がパラパラと入っています。

「これ何?」と隣のデスクの同僚に聞くと、「今度の宴会の参加費用だ」と説明してくれました。

数多いA社のレクリエーションのひとつでしたが、Fさんはあいにく出張が入っていて参加できません。「あ、俺その日出張だから」と費用を入れることなく、次のデスクに箱を回しました。

ところが、箱が去ってしばらくすると、総務の古株らしい女性社員がFさんの元にやってきました。「Fさんお金いれなかったでしょう?」なんと、吊るし上げに来たのです。参加できないからと説明すると、女性社員はため息をつきつつこう言いました。

「そういうワガママは困るのよね。昔から参加不参加に関わらず、費用は一律でみんな入れてもらってるんです。Fさんは転職して来たからかもしれないけど、職場の和を乱すようなことはしないでほしいの」

参加もしないイベントにお金を要求されるのはおかしいと思うものの、まくしたてられて言葉を挟めません。ムッとしながらもFさんは言いました。

「じゃあ、払いますよ。いくらですか?」

「今回は大目に見ます。でもねえ、Fさんぐらいの年齢の人なら言われなくても倍くらい入れるものですよ」

そう言い捨てると女性社員は去っていきました。

なんだ、この変なルールは。そして、それを不思議に思わない社員たちは。ドッと疲れを感じたFさん。職場に馴染むということは変なルールも受け入れるということなのか、とあきれてしまいました。

自分で出した条件ながら、長く勤める社員が多いことと中途採用者が馴染むことは、実は相反する要素。それを今、Fさんは身をもって体感しました……。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

離職率は重要

人材の募集記事などには、平均在職期間を記載することは稀です。調べようと思っても年齢別の勤続年数や業種別の平均的な勤続年数などから、だいたいの数字を算出することがやっとでしょう。ただ、離職率の低さは今の時代重要なアピールポイント。離職率の低い職場は、その旨を大々的に告知することもあります。

これでサクセス!

離職率チェック

しかし、その数字は「要確認」。例えば、「離職率はなんと、3パーセント!」とうたっていても、それは一部の募集職種の話であり、会社自体の離職率や自分の希望職種の離職率とは限らないこともあります。ですから、それが会社の歴史全体を通してなのか、全ての職種を通して言えることなのか、などをチェックしましょう。

文・イラスト:
山本ちず

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