他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:045 あこがれの上海

未経験ながら、R社の上海支社に赴任するスタッフとして中途採用されたFさん。働きながら会社負担で語学学校に通い、着々と準備を進めていくが……。

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未経験者OKの海外赴任

Fさん(25歳)が転職を志した理由は、海外、とくに中国での事業に携わりたいという積年の思いでした。ただ、現在は、海外事業とは縁のない国内にのみ営業所のある企業に勤めていて、海外赴任の経験も、語学のスキルもありません。

そんなコンディションでしたので、かなりハードルの高い転職と思われましたが、なんとFさんは内定を手に入れたのです。

転職先は関西に拠点を置くR社。近く、上海に支社を開く予定があり、現地で勤務できる人材を探していました。採用にあたっては、海外赴任経験の有無よりも本人の意思とやる気を優先してくれたらしく、「上海支社のメドがつくまでは本社勤務になるが、その間は赴任の準備を進めていただきたい。夜には語学学校に通ってもらう。それら費用はこちらで持ちましょう」というありがたい申し出つき。

未経験者のFさんにとって、準備期間があることも、むしろ願ったり叶ったり。嬉々としてR社に入社したのでした。

R社は最初の約束を守り、Fさんに残業もそこそこに語学学校へ通う時間を設けてくれました。

しかし、Fさんの講習が進んでも、一向に上海支社の状況が聞こえてきません。どうやら開設にトラブルが生じているようです。心配になったFさんは、経緯を知る上司に相談を持ちかけました。

「上海の方は最近どうなっているんでしょう?もし沙汰止みになってしまったら、僕は……」

「いや、それは絶対ない。準備段階でちょっと遅れが出ているだけだから。社としても上海進出は必須事項だ」

難航する人選

「現地での事務所工事も若干遅れてるらしいけど、F君と一緒に上海に行くメンバーの選考にも手間取っていてね」

Fさんの他にあと数名、人材管理のできる社員を派遣するつもりでしたが、打診した社員が皆、首を縦に振らなかったのです。「やっぱり、みんな結婚してて奥さんや旦那さんや、子供がいるしねえ。会社としても、無理強いはできないんだよ。君みたいに志願してくれる人が他にいればいいんだけど……」と、いかにも困り果てた様子です。

その後もベテラン・中堅と順番に打診し、果ては新卒の内定者にまで話を持ちかけて、内定そのものを蹴られそうになり、人事部から「最近は売り手市場なんですから、不安になるようなことを言わないでください!」とキツく叱られたりもしていたようです。

そうこうしているうちに、上海支社の方は徐々に準備が整い、社長や役員がひっきりなしに現地に飛んで、現地スタッフの手配などを固めていきます。

気がつけば、早くこちらから人材を送らねばならないというところまできていました。そして、せかされた上層部はある決断をします。

「F君ひとりを、まずは“先遣隊”として送ろう」

こうして、いきなり新天地にたったひとりで送り込まれることになってしまったのです。これにはFさんもさすがに抵抗を示しましたが、

「これ以上現地を寝かせておくわけにいかない。維持するだけでもどんどん赤字として計上されるんだ。ずっと一人でとは言わない。すぐにこちらからも人材を整えて送るから、しばらくの間頑張ってほしい。それに現地スタッフの中には、日本企業で働いていた日本語ペラペラの人も数多くいるし、しばらくは生活面でガイドしてくれるよう言ってあるから不自由はないはずだ」

何人もの上司からこう諭され、Fさんは単身、大陸の土を踏むことになってしまったのです。

本社からの“後発隊”を待つFさんに降りかかる、海外ならではの試練とは……。
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文・イラスト:
山本ちず

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