他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:046 あこがれの上海

本社からの社員派遣を待ち続けるFさんは、現地の中国人スタッフに混じって孤軍奮闘する日々を過ごすが……。

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いざ、赴任!

日本人スタッフが集まらぬまま、上海に飛ぶことになったFさん。ただ、事前の説明どおり、現地のメインスタッフは日本語が堪能で意思の疎通に不便はなく、時折本社からも社員がやってきて手伝ったり指示をしたり、差配をしていってくれます。

……が、彼らはあくまで出張扱いで上海に残ることはなく、しばらく滞在するとまた本社に帰ってしまいます。それを「お出迎え・お見送り」しながら、「こっちに来る人は決まりましたか?」と聞き、催促するのがFさんの常になっていました。

しかし、本社からの返事はいつも芳しくありません。募集しているものの、見切り発車的にスタートした白紙に近い状態の上海支社に飛び込もうという社員は現れないまま。「3カ月頑張ってくれ」「今選考中だから」「もうあと3カ月だけ」と引き延ばすばかりでした。

そうして半年を過ぎたころには、Fさんは疲れ果てて催促をやめてしまいます。本社の方でも、Fさんからの催促がないことを幸いとしたのか、とうとう社員の派遣については何も言ってこなくなりました。

現地スタッフとFさん、そして時折監督・指示にくる本社の上司たち。この従業員形態で、上海支社は形が決まってしまうかに見えました。ところが半年を過ぎたころ、Fさんから海を越えて辞意を伝えるメールが送られてきたのです……。

あわてた上司はすぐさま上海に飛びました。上海でのFさんは、半年前の理想に燃えていたときとまるで別人のようにくたびれていました。

「今まで1人で頑張ってくれたことを社長以下みんな知っているし、評価もしている。今Fさんに辞められると、立ち上がったばかりの上海プロジェクト自体がまた後戻りだ。なんとか踏ん張ってくれないか」

社運をかけたプロジェクトが、Fさんの一存でダメになってしまう。そのカギを握っているのだと、上司はなんとか説得しようと、繰り返し言葉を尽くします。

そんな上司に、Fさんは厳しい表情のまま口を開きました。

孤立無援

「社運がかかっているようなプロジェクトなら、なぜもっと早くに追加の人員を派遣してくれなかったんですか」

Fさんは異国の職場で唯一の邦人であったストレスの大きさを語りました。

当初、Fさんの仕事はいわば教育係。日本式、R社式の仕事の進め方を現地スタッフに叩き込む役割を担っていました。しかし、些細なことでも考え方の違いで戸惑う場面が続出。

例えば、スケジュールに遅れが出ると、日本人は遅れが出ていることを含めて報告するところを、中国人スタッフは「大丈夫」「順調」としか言いません。本人の中では、遅れを取り戻す段取りがあるようなのですが、それを説明する必要はないと思っているのです。

しかし、日本人であるFさんは「本当に大丈夫なのか?自分が日本人だから、つっけんどんに接してくるのだろうか?」などと深読みして胃を痛くしてしまいます。

また、中国人スタッフが「できました」と出してくるものに、細かいミスやアラが目立つこともありました。「ここも、ここも、まだ不十分じゃないか!」とFさんが叱ると、「仕上げはまだですから」悪びれる風もなく、堂々と言い返されてしまいます。これも現地スタッフの考えでは、一通り作業を終えることと、最後の仕上げは別工程なのです。

Fさんに注意され、自分の非を認められない中国人スタッフは激しく主張を通し、Fさんと口論になってしまいました。しかも、これが引き金になってこのスタッフは辞め、さらに数人のスタッフが後に続くという事件にまで発展。

元をたどれば、単なる言葉に対する捉え方の違いであり、Fさんも中国人スタッフに日本式のビジネスを教える上で、こうした衝突はある程度想像していたと言います。

「人種が違うと考え方も違いますから。覚悟もしてましたし、慣れていこうと思ってました。でも、我慢できなかったのは、こんな局面でも本社は応援の人員を送ってくれなかったことですよ」

日本語を理解するスタッフもいたとはいえ、「日本vs中国人」の構図になると、彼らはFさんに味方してはくれません。一致団結して、まくしたてるように母国語で憤りをぶつけてきました。こうなると、語学学校で学んだ程度のFさんには、彼らの言葉を聞き取るだけで必死、充分理解できたとは思えませんでした。

「中国人スタッフとの対立よりも、1人でそれに立ち向かわなければならなかった孤独に、僕は耐えられませんでした」

同じ日本人のスタッフがいれば、ちょっとした愚痴をこぼしたり、悩みを共有できたりしたでしょう。でも、そうした仲間に恵まれなかったFさんは、じっと不平不満を内に溜め込むばかりだったのです。

ほどなくFさんは帰国し、R社を退社。結局、R社は上海支社を「採算がとれる見通しがない」とし、閉鎖してしまったのでした。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

海外で働く

海外勤務の求人を探すことは少し特殊です。国内の企業の海外支社を狙う方法、外資系企業を狙う方法、海外の企業に直接アプローチする方法などがありますが、いずれも国内の求人に比べると件数がグッと少なくなるため、人材紹介会社や転職サイトなどに登録し、長期戦で情報を集めることになるでしょう。

これでサクセス!

志望動機はシビアに

国内での転職以上に明確に求められるのが、志望動機です。なぜ海外なのか、なぜその国でなければいけないのか。そして、長期的なキャリアビジョンを描いているのか。国をまたいでの採用となると、受け入れる側にとってもある種のプロジェクト。国内以上にシビアなジャッジになるため、ポイントを絞ったアピールが必要になります。

文・イラスト:
山本ちず

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