他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:048 あなたのために

自己流の営業方針で顧客に食い込んでいくHさん。順風満帆に見えた営業活動だったが、ある企業で担当者が異動になり、仕事を切られてしまい……。

≫前編を読む

逃げる新担当

オフィス文具や機器を手配するA社に営業職として転職したHさん。人の役に立ちたいという気持ちから、自分なりの工夫や気配りで仕事にあたり、成果を上げていきました。

そうこうしているうちに、Hさんの人間関係は仕事の範囲を超えての付き合いも増えるように。Hさんを花見や飲み会に呼ぶ会社が出てきたのです。

大人しい営業マンが多かったA社では、大きな声で挨拶をし、積極的に人とふれあおうとするHさんのやり方は、最初から異彩を放っていました。ましてや、出入り先の宴会に参加した人などは皆無。さすがに、「Hさんは少々逸脱しているのではないか」との声もちらほら聞こえるようになります。

しかし、結局は営業成績が良いこと、顧客からの招きであることなどが考慮され、Hさんは「お咎めなし」ということに。

そんなとき、出入り先のひとつである広告代理店B社で事件が起こりました。B社の担当者は40代のベテラン社員で、Hさんの礼儀正しさを買ってくれている人物でした。ところが、この担当者が異動になり、別の人に変わってしまったのです。

Hさんは早速顔つなぎに参上。新担当者はHさんと同年代か、少し若いぐらいの男性。対応は特に冷たくもなく、今後ともよろしくと、当たり障りなく終わります。

しかし、この直後からB社からの発注がストップしてしまったのです。担当者が変わった途端に対応が変わる、営業という仕事にはよくある事態ですが、営業に転じて間もないHさんにとっては大きな衝撃でした。そして、何が問題だったのか探りあて、元通りの仕事をもらおうとHさんは意地になりました。

前にも増してB社に足を運び、なんとか以前通りの発注をもらおうと担当者を揺さぶったり、プッシュしたり。しかし、担当者は一枚上手でのらりくらりとHさんの攻撃をかわし、お義理にせよ発注するそぶりも見せません。Hさんの得意とする顧客向けの新しい商品プランも満足に見てももらえず、Hさんのフラストレーションは高まる一方。今まで定期的に届けていた消耗品も、「見直すものもあるので、ちょっと待ってもらえますか。こちらから連絡しますから」と止められたあげく、一向に再開する様子も見えません。

「これは、どこか他社に変更されたのでは」

Hさんは疑念を抱き、乗り換え先はどこなのか、何が原因だったのかを必死に探りはじめました。

勝てないライバル

その甲斐あって、ほどなく“敵”の正体が判明します。

Hさんから仕事を奪ったのはライバル企業の某社、しかも営業担当はHさんよりも若い女性で、最近かなり足しげく出入りしているとのこと。

営業VS営業の戦いに女の戦いが加わった形で、Hさんはガゼン対抗心が燃え上がります。今まで以上に訪問の頻度を増やし、それと反比例して商品を進めることはせず、「ちょっとご挨拶に」「お顔を見にきました」とだけ言って思わせぶりに帰っていく。「出張にいったので」という口実でお菓子をもっていく。

とにかく、ライバルよりも親近感を抱いてもらおうとHさんは必死でした。

あるときHさんは、担当者の誕生日が近いという情報を入手。駅前の花屋で買った小さなブーケを手に、B社をいそいそと訪れました。しかし担当者は不在。Hさんはやむなく「お誕生日おめでとうございます」とだけ書いたメモをつけ、社員に託して帰りました。

ところがその翌週、ご機嫌伺いにB社を訪れたHさんは恐ろしいものを発見します。いつものようにオフィスに足を踏み入れようとしたところ、ドア脇の茶色い固まりが目に飛び込んできました。それはすっかり枯れ果てたHさんのブーケ。しかもブーケの下にコピー用紙が敷いてあり、そこには担当者の文字で「これは受け取れません。ごめんなさい」とだけありました。

呆然と見つめるHさんに気付いた、以前からなじみの社員が声をかけてきました。

「それね、××さん(担当者)も困ってたよ。あの人、そういう大げさなこと苦手だから」

ブーケは豪華な花束などではなく、負担にならない程度のごくごく小さなもの。何もこれぐらいのことで……と言いかけるHさんにその社員はトドメの一言を投げかけました。

「正直、うちの仕事はあきらめた方がいいよ。××さんが仕切ってる間は、絶対Hさんのところにはいかないから」

「え!?どうしてですか?」

「だって、あの人自分のカノジョの会社に発注してるんだもん」

そもそもパーソナルにお近づきになろうとするHさんを、苦手に思っていた担当者。カノジョにバレればさらに面倒と、誕生日にも居留守を使い、小さいブーケも受け取らず逃げていたのです。

「今度結納だって言ってたから、もうずっと向こうの会社に頼むだろうね。どれだけHさんが頑張っても、“奥さん”の会社には勝てないもんね」と続く言葉が、ショックのHさんの耳を無情に通り過ぎていきました。

しかも、B社からA社に「過分な営業活動はご無用です。できれば男性に来ていただけるとありがたい」という申し入れもあり、Hさんは営業方針を転換せざるを得なくなったのでした。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

営業職の転職

営業という仕事は転職市場において非常に大きなマーケットです。そして職種や業界、企業規模によってそのスタイルや専門知識は千差万別。「営業だからツブシがきく」「売れさえすればいい」と一概には言えない現状です。自分の経験や営業スキルに自信がある人ほど、その能力が開花する業界・企業を選ぶことが肝要です。

これでサクセス!

今求められる営業

飛び込みや「数打ちゃ当たる」の電話営業など、いわゆる体力勝負の営業、「売ればいい」タイプの営業は、実は減りつつあります。肝心な新規開拓は上層部で行なう企業もあり、どちらかといえば顧客を取り込み末永くケアしていく手腕が求められると言えるでしょう。

文・イラスト:
山本ちず

ソーシャルブックマークに登録 このページをYahoo!ブックマークに登録 このページをdel.icio.usに追加

▲ページのトップへ