他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:049 二足のわらじ

5年で黒字化を目指す開発部門。しかし、「悠長なプランだ」と途中で却下され、すぐに結果を出すか、予算を削るか、人を入れるかの3択を迫られてしまい……。

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赤字部門

開発の仕事に就いているOさん。所属はWEBアプリケーション開発部門でしたが、実はこの部門は立ち上げて間もない新規事業。まだまだ採算が取れない状況でした。

そのことを周囲から突き上げられることもありましたが、リーダーは黒字化までの5年計画など、詳細なプランを提出。なかなか結果が出せないときも、周囲や他部署を説得し、メンバーが開発に専念できるよう守ってくれていました。

こうした経験を通じ、チームのメンバーは結束力を強め、働き易い人間関係を築いていました。

しかし、周囲からの突き上げはなかなか厳しく、一度は通った「5年計画」も差し戻され短縮を迫られてしまいます。さらには、早急に結果を求められ難色を示すリーダーに、上層部はある決断を下しました。「すぐに結果を出すか、予算を削るか、テコ入れにメンバーをもう1人、投入するか」メンバーに厳しい開発環境を強いても結果は出せない。それならば答は1つです。

こうして開発チームに新しいスタッフがやってくることになりました。Oさん他メンバーたちは、自分たちを導いてくれるようなスター・プレーヤー的開発者を期待。他部署の目立つ開発者を思い浮かべ、あの人、この人と予想をめぐらせていました。

しかし期待は大きく外れ、やってきたのはベテランの営業マンT氏だったのです。

「開発知識があるわけでもないTさんが?」

「あの歳から開発に回るの?」

驚き、戸惑いを隠せないOさんたちメンバーの前に、T氏は営業で培った人当たりの良さと明るさで、颯爽と登場しました。

疑惑の“二頭政治”

「専門的なことは君たちに到底かなわないし、いろいろと助けてもらうことも多いと思います。でも、営業である僕ならではのやり方でこの事業を大きくしていくつもりだから、みんなついてきてほしい」という挨拶にさらにびっくり。

T氏は今までみんなが慕ってきたリーダーの、さらに上のポジションにつき、開発部署の統括責任者になるというのです。またさらに聞けば、営業部に席を残したままのかけもち所属だというのです。

リーダーの慎重なやり方を、悠長と酷評した上層部は専門職寄りのリーダーに加えて、数字の稼げる営業の管理者を入れ、“二頭政治”にするという口上で、T氏をよこしてきたのでした。

予想もしなかった門外漢の上司に不安を隠せない同僚たち。「営業出身者に開発の管理ができるのか?」というメンバーの危惧は的中し、以降毎日のように小競り合いが勃発。何日もかけて作ったプログラムも、「あー、これねえ、ちょっと変更してよ。うん、その方がいい。みんなはプロなんだから、パパッとお願いね!」T氏は、簡単にいじれない部分に変更を命じます。

営業マンとして励ますつもりでこう表現したようなのですが、これが開発メンバーには技術の軽視と受け取られたようで、

「変更となるとまた時間が。当初はこれで完成でしたし」

「まあ、それはね、そうかもしれないけど。変えた方が絶対良くなるんだよ?だったらもっと良くしようよ!なんでしないの?」

修正が大きな負担になると話すメンバーに、「良いことをしない方がおかしい」という視点で説こうとするT氏、これでは話が噛み合いません。

こんなトラブルが起こるたびに、メンバーは逐一リーダーに報告。

「Tさんには我慢できません。丸め込んで僕らを便利に使おうとしているとしか思えません」

「時間のかかる仕事も、開発なら簡単にできると思い込んでるんですよ!」

このように鼻息荒く怒りをぶつけられたリーダーは、メンバーをなだめるだけでも一苦労。

「まだうちの仕事のやりかたが読めてないだけだよ。営業であれだけ数字を出せる人なんだから考えもあるだろう。仕事の差配については、僕の方からも説明して分かってもらうから」

部署内で中間管理職になってしまったリーダー。思案顔でT氏になにやら話を持ちかける姿が、しばしば見受けられるようになりました。

営業マンT氏と開発スタッフの衝突は続く。Oさんもリーダーに対し、事あるごとに不満を口にしていたが、とうとうT氏からの反撃が始まり……。
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文・イラスト:
山本ちず

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