他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:050 二足のわらじ

「数字の取れる部署にする」と宣言してやってきたT氏は、営業部に籍をおいたままのかけもち上司。新しい提案をするものの現場意識とはズレがあり……。

≫前編を読む

かけもち上司

バリバリの営業マンのT氏を上司に迎え、不満を爆発させるOさんたち。なかでもどうしても解せなかったのは、T氏のかけもち状態。

「うちの部署の長なのに、どうして異動じゃなくてかけもちなんだろう?」

実際、T氏は1日に何度も営業部に足を運んで仕事の指示を出したり、逆に営業マンがT氏の元に訪れたりと、慌ただしい様子。リーダーは、「うちの部署に必要な人材だって上が判断したんだが、営業でもTさんは頼りにされていて、むこうのメンバーも離さなかったらしい。それで両方かけもちってことで落ち着いたらしいよ」と説明しましたが、イマイチOさんは納得できません。

「そうまでしてTさんに来てもらわなきゃならないんですか?うちはうちでガンバってたと思うのですが」

「うん。でも、それじゃ足りなかったんだよ……」

残念そうなリーダーの様子に、あらためて自分たちの立場の弱さを痛感したOさん。当初言われたリーダーとT氏の“二頭政治”も、ふたを開けてみればリーダーは「折衝役」に過ぎず、決裁権があるのはT氏だけでした。

そんな折、OさんはT氏から呼び出されます。

「リーダーとも話していたんだけど、昇進試験にチャレンジしてみたらどうかな?」

寝耳に水のOさん。T氏が提示してきた試験とは総合職の管理ポストもの。スペシャリスト志向で現場にいたいOさんには想像もつかないことでした。Oさんはその旨を説明し、固辞しますが

「O君なら大丈夫だから!うちの部署ってイマイチ覇気にかけるというか、影が薄いだろ。この部署にも上昇志向のある社員がいるってことを見せないと」

あくまでも部署のために必要なことなのだと説き続けます。

「それなら僕よりももっと適任の人がいるんじゃないですか?××さんや、△△さんの方がキャリアもあるし、年も上です。その人たちを差し置いて僕が先にいく訳には……」

先輩社員からあたってくれ、と断るOさんに、T氏は苦々しい顔でこう漏らしました。「それがねえ……彼らは技術者でいたいっていうか……」すでに順番に打診し、断られていたのです。

上司の“踏み絵”

「みんなそう言うんだよね、開発の人は。でもさ、それじゃダメだと思うんだよ。会社でやってくには。人間、年を追うごとにそれなりの道をたどってステップアップしてくべきだよ。それが成長なんだよ。ここらでゼネラリスト的視野を持たないと、この先長く会社で生きていくのは難しいんじゃないかな?」

確かにその考えも一理ありますが、仕事にこだわりはあるものの、会社への執着心が薄いOさんは、T氏が力説すればするほど考え方の違いに辟易するばかり。

「いずれそうすべきだとしても、まだまだ自分は経験不足なので、やはり今の仕事を極めたいです」と昇進試験をキッパリ断ったのでした。

Oさんは、このT氏の発言を「またTさんは、営業らしい事を考えてるなぁ」と、いつもの現場知らずのトンチンカンな指示だと甘くみていました。ところが、これは後日の大改革の前兆、T氏の用意した“踏み絵”だったのです。

ある金曜日の夜、T氏は部署のメンバーに一斉招集をかけて、こう発表します。

「うちの部署は来期から、営業部所属になります」

この部署はいままでは独立採算の部署だったものの成績が芳しくなく、自分があれこれと提案をしても、頑固な部署の体質を変化させられなかった。そこで部署から一段下のチームに格下げし、ムダを省くことにした。管理者T氏が営業部所属なので、自然と営業の管轄に入り、その名を「営業部開発チーム」へと改めることになったと言うのです。

「皆さんに数字の取れる社員になってもらいたくて、昇進試験もすすめました。でも、皆さんは職人でいたいと主張するばかり。『稼げる部署にする』という約束を守るには、この方法しかなかったのです」

このように最善を尽くしたと言うT氏に、メンバーの戸惑いは最高潮に。

「僕たちにも営業をしろというのですか?」「開発の仕事はもうできないんですか?」

しかし、T氏はこう答えます。

「せっかくなので、これを機にもっと営業と手を取り合った仕事をしてもらおうと思う」

つまり、営業マンは専門知識の面で心細い。だからそのフォローをし、ゆくゆくは専門知識に長けたスペシャリストの営業マンを送り出したいということ。

「これはうちの部署にしかできない仕事だ」

自信を持って言い切ったものの、メンバーのざわつきは収まりません。

「純粋に開発をしたい人はどうしたらいいんですか?」

「今まで請け負っていたWEBアプリケーションの開発作業は、外注することになりますよね?」

幸い発注先は関連会社の1つなので、希望者は紹介状を出すとのこと。面談の上そちらに転職してくれ、というのです。しかし、関連会社にいけば、給与や待遇が大幅にダウン。本社社員との格差が広がることは必至です。Oさんはじめメンバーたちは「収入が下がったらキツい」「車のローンが……」などと言いあい、「仕事か、収入か」と頭を抱えてしまいました。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

かけもち上司

管理者が他の部署と兼任というのには、要注意。つまり、どちらか片方のウエイトが軽くなるか、どちらかが切り捨てられる危険性があります。所属部署の将来性・安定性を読むには、管理者のポジションや出身職種などのチェックが必要です。

これでサクセス!

不明瞭な異動

管理者だけでなく、チームの主要メンバーがかけもちの場合も同様に危険です。なんらかの事情でチームが解体し専任スタッフはリストラされたものの、かけもちスタッフは他部署に引き抜かれ生き残る、というケースも。所属がはっきりせず異動が多い企業は、安定性という観点で注意が必要です。

文・イラスト:
山本ちず

ソーシャルブックマークに登録 このページをYahoo!ブックマークに登録 このページをdel.icio.usに追加

▲ページのトップへ