他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:055 携帯を取り上げろ!

積極採用中のA社では、とにかく人材確保のためにと、人事部社員の意識改革が進んでいた。転職フェアのスタッフとして抜擢されたFさんは……

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人事部の意識改革

団塊世代の大量退職、いわゆる2007年問題が取り沙汰されていますが、広告制作会社A社でも2007年を見越して、数年前から積極的な人材採用に取り組んでいました。

が、危機感を抱くのはどこも同じ。ライバル企業におされ、A社では人材獲得に苦労のし通し。

そこで、コンサルタントを頼って採用・選考スタイルを見直すことにしたのです。

中でも最も改革を迫られたのが、直接応募者と接する人事スタッフ。

かつては買い手市場、かつ人気の高い広告業界ということで、採用側には自然と『選考してやる』意識が満ちていました。

しかし今となっては、このやり方では応募者に逃げられてしまいます。特に競争の激しい新卒採用となると、その傾向は顕著。中途採用であっても応募者への応対には注意を払わねばなりません。

応募者を歓待し、褒めまくれとまでは言わないが、少なくとも選び選ばれる立場は対等なのだと、人事スタッフは懇々と諭され、応対の訓練を積むことになりました。

例えば「ふーん」「それで?」など敵対意識をあおる物言いはしない。

相手を座らせたまま、上からの視線で話しをしない。逆に相手を立たせ、座った状態で話すようなことはしない。目線を対等に保つ。

出来るだけ声のトーンを下げない……などなど。これらの対応は、威嚇している印象を与えるからです。

また新卒採用と平行し、通年の中途採用も実施しているA社は、転職フェアにも参加して広くアピールすることになりました。

ついてはブースに詰め、参加者相手に会社と仕事の説明をするスタッフが必要になります。その役目に抜擢されたのが、Fさんでした!

聴衆を惹きつけるトーク

Fさんは人事部の中では若手で、就職氷河期にやっとの思いで就職した経験の持ち主。

A社に入る時には、当時の面接担当にかなり意地の悪い物言いをされましたし、人事担当として応募者をジャッジする側にまわった時には、彼らに厳しい事を言ったこともあります。

それだけに、

「そんなに甘やかして入社させても、仕事が続くんだろうか……」

と、最近の売り手市場を複雑な心境で眺めていました。

かといって厳しい対応をすれば、転職フェアでは浮いて敬遠されてしまうのがオチ。上からの命でとにかく頭数を確保しろと言われているFさんは、展示即売会で商品を売り込む実演者のような心境で説明に挑みました。

ブースに八分目ほど集まったところで、

「こんにちは!」

と明るく挨拶。会社を持ち上げ、参加者を飽きさせないよう引きつけつつ、最後は

「以前は、会社選びを結婚と例えた人もいましたが、今はそんなに重く考える必要はありません。僕は不動産選びと同じようなものだと思ってます」

と、あらかじめ用意していたトークを展開。

「部屋探しをする時には、何軒も物件を回って、いい物件だと思っても予算オーバーならあきらめて……などとそれぞれの物件を比べながら折り合いをつけて決めますよね? 仕事選びもそうだと思うんです。僕は、皆さんに1社だけを選んで応募してほしいとは思っていません。皆さんには会社を賢く選んで欲しい。そして願わくば、A社を選んで欲しいんです」

と、聴衆の共感を得られそうな身近な話題に例えて締めにもっていくというもの。

このシナリオを伝授した人物は、Fさんの先輩。過去数年の会社説明でこのトークを披露し、応募者の立場にたった切り口で、例え話の達人と評判だったというのです。

ところが、実際にFさんがこの話を始めたところ……。

ブースに集まったフェア参加者たちは、Fさんの話に耳を傾けたのか?
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文・イラスト:
山本ちず

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