他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:59 勤務地は酒豪の郷(前編)

地方勤務を命じられAさんが向かった赴任先は、“宴会”が何よりの楽しみだという酒豪の郷だった。

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地方勤務

 Aさんはつい先日、某メーカー系列の販売会社に営業マンとして入社しました。同社の営業マンはある期間、必ず地方勤務を経験する習わしになっています。Aさんも例外なくこの習わしに従い、地方勤務をスタートすることとなりました。

 Aさんは、転勤族の家庭に育ったので、もともと転勤に抵抗が少ない人物。最終的に首都圏勤務に戻ればいいや、とノンビリと構えていました。

 ところが、この気楽な覚悟が思わぬ苦労につながっていったのです。

 Aさんの勤務先はのどかな山里で、昔は街に出るのに半日かかるほど不便な土地でした。

「今は道路完備も進んで、10年前では考えられなかったくらい首都圏からのアクセスも便利になった。最近はインターネットも発達しているから買い物も情報収集も不便は無い」

 とのこと。また、街並みは小綺麗で商店も適度にあり、確かに生活に困る事はありません。

 会社の同僚も、素朴で裏表の無い気質。しかしイベントごとに異常に飢えていたのです。

 Aさんの着任早々、支部長の

「よし! 今日は歓迎会だ!

 という大きなかけ声を封切りにその晩、3次会まで続く飲み会が開催されました。

 ですが田舎街の飲み屋は、遅い時間まで営業していないのです。2次会の時点でもう開いている店は無くなり、3次会はなんと支部長の自宅

「こんな深夜に支部長のお宅に伺うなんて、とんでもない」

 と大慌てのAさん。酔いも冷める勢いで断りましたが、他のメンバーはまったく聞く耳を持ちません。

「カタイ事言わないの!」

「付き合い悪いなぁ。この辺じゃあたりまえ、あたりまえ!」

 とAさんは、押し流されるようにして支部長の自宅に連れて行かれたのでした。

宴会は続く

 同僚の『あたりまえ』発言の通り、支部長の家は玄関脇すぐの場所に応接室があり、いつでも宴会が出来るようになっていました。

 支部長夫人も慣れたもので、パジャマの上にカーデガンを羽織ってトコトコ出てきて

「あら、こんばんは。あら、あら、ハイハイ……」

 といった反応。そしてお酒と簡単なツマミを出してくれた後は完全放置です。

 夜中に大挙して押し掛け、さぞかし夫人の機嫌を損ねるだろうと案じていたAさんは、夫人の手慣れたあしらいに拍子抜け。

 一方、押し寄せた社員たちは、居心地が良くて、酔いもまわり、さらに盛り上がっていきました。

 Aさんが這々の体で帰宅したのは深夜3時を過ぎていました。酔いつぶれてしまった社員は支部長の家に泊まったようです。

 この地域ではこのようなことは珍しくはありません。娯楽はほとんどなく、楽しみといったらもっぱら宴会。3次会・4次会ともなれば、

誰かの家に転がり込むことは当たり前なのです。

 しかし、終わったはずの大宴会は、震え上がる“酒豪の郷伝説”の始まりに過ぎませんでした。

 Aさんの着任は宴会には恰好の理由だったらしく、翌日からも

「今日は部署の宴会」

「今日はチームの宴会」

「もう慣れただろうから一杯どう?」

「今日は遅くなった。飯でも食ってくか?」

 など、ありとあらゆる理由をつけて誘われ続け、連日連夜飲み歩くことになってしまったのです。

あまりの酒豪ぞろいにAさんは精神的にも肝臓的にも大ピンチ! そこでとうとう誘いを断ろうとしたのだが……。
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文・イラスト:
山本ちず

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