他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:60 勤務地は酒豪の郷(後編)

Aさんの赴任先は娯楽に飢えた酒豪の郷だった。連日繰り広げられる歓迎の酒宴に危機感を抱くようになったAさんは……。

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深夜の突撃

 早くも、この地に来た事を後悔しているAさん。しかしAさんの気持ちとは裏腹に、同僚や上司たちは

「これで、Aさんもこの土地の人になった」

 と以前にも増して親しみを感じ、頻繁に酒宴に誘うようになりました。それをたまに断ると、

「付き合いが悪い。そんな事でここで務まると思うのか?」と言われます。

 さらに厄介な事には、

「そろそろ、奥方の顔も拝ませてもらわにゃならん」

 と、上司が「宴会会場をAさん宅にせよ」とせっつき始めたのです。

 Aさんの夫人は夫の転勤に同行してきた人で、Aさんと同様、この土地のことはよくわかりません。

深夜に自宅で宴会をする習慣もありません。

 それだけに、Aさんが同僚をつれて深夜帰宅した時は、びっくり仰天。

「なんでウチなのよ! こんな時間にどういうつもり? 何も用意してないわよ!」

 と、カンカン。

 しかも翌日は、上司からも呼び出され、

「A君、こんなことは言いたくないんだが、君たちのためを思うからあえて言う。昨日の奥さんの態度はどんなもんかねえ。

君もこれからは家族ぐるみの付き合いが始まるんだから……。郷に入っては郷に従えというじゃないか、な?」

 と、妻が膨れっ面で酒の用意をしていなかった事を、あたかも仕事上の失敗のように注意されたのです。

 会社に行けば上司に嫌味を言われ、家に帰れば奥さんから

「もうこんなトコ嫌! 何とかして!」

 と突き上げられます。しばらく思案したのちに、Aさんは転勤願いを出すことにしたのです。

5年縛り

「これは、どういうつもりだ?」

 Aさんが出した転勤願いを前に、上司は怒り心頭のご様子。

「仕事のこと、この土地のこと、色々なことをずいぶん教えたつもりだよ。やっと一人前になろうかって時にこんなことされちゃ……。それなりの期間は働いてもらわないと……」

「では、どのぐらい勤めればいいんですか?」

 言い出した手前、Aさんも引けないと強気で質問を返すと

「そうだな……少なくとも5年。でも個人的には10年はここにいてもらいたいなぁ」

 とクラクラするような答えが……。その瞬間、Aさんの頭に転職の文字がよぎりました。

 そこへ上司が追い討ちをかけるように、

「今回の事は、言いたかないけど、査定にも反映するよ」

 転職の決意が固くなった瞬間でした。

 それからAさんはすぐに行動に移りました。狭い街がゆえ、書店で転職雑誌を買っているところなどを目撃されたら面倒です。

Aさんは、インターネットで企業を探し応募。親戚の葬儀・法事と言い訳して休みをもらい、面接のために東京へ出かけました。

一社応募するだけでも、大変な手間と時間。

 その分、面接ではヒートアップしてしまいます。

「この仕事を極めたい気持ちはあるのですが、今の赴任地が性に合わなくて……」

 と、Aさんとしてはかなり考慮して表現を選んだつもりでしたが、面接官は、「何かトラブルがあったのでは」と思ったようです。

結果、この初めての面接では

「営業職は難しいのかもしれませんねえ……。別の職種が向いているのでは?」

 とやんわり断られました。

 これではマズイと慌てたAさん。次の面接からは

「実は、今の職場は一度転勤になると5〜10年はその土地に縛られてしまいます」  と正直に告げ、

「これが閉鎖的な土地柄だとその地独特の営業スタイルが確立していて、拘束されることが多いのです。色々と挑戦したいことがあっても、今の状況だと実現不可能ではないかと思い、転職しようと決めました」

 と自分のキャリア形成上の問題を前面に出しました。さらに

「一カ所に拘束されなければ、勤務地問わず、連続転勤は可能」

 と伝え、ようやく面接官に耳を傾けてもらえるようになったのです。

 しかし今回の事に懲りたAさん、転職先の企業では、転勤は何年地方を渡り歩くことになるのか、最終的に希望の地に戻れるのか、をキッチリ確認するのを忘れませんでした。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

転勤の注意点

転勤がある企業ならば、募集要項にその旨が記載されているはずです。面接時には赴任した社員の例や概ねの赴任期間についてなどを確認しておくと、ライフプランを立てる上でトラブルは減るでしょう。

これでサクセス!

キャリア計画

『最低×年は○○勤務』という勤務条件はキャリア形成に大きな影響を与えます。特に転勤は実際赴任した後に、その年数が変動することもあるので、同意書などを作成し、転勤の条件を記録として残しておくと良いでしょう。

文・イラスト:
山本ちず

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