他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:61 帰ってこいよ(前編)

ルーティンワークに飽きていたJさんは、何か新しいことからの刺激を求めていた。そこへ転職した友人から声がかかり……。

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転職する友人

 販売の仕事を始めて3年のJさんは、自分がこのままこの仕事を続けるべきかどうか、考えるようになっていました。

 責任のある面白い仕事を少しは任されてはいるものの、大半は慣れた作業。この先5年後、10年後の自分の姿も最近何となく見えてきました。

 そんな折、偶然、学生時代の友人に会ったのです。この友人はWEB制作関係の仕事に転職するとのこと。入社前に知識を身につけておこうと、書店で大量の参考書を買った帰りでした。

「覚えなきゃいけない技術が多くて、会社に入って、ついていけるかどうか……」

 久々に会う友人は不安そうでした。

 しかし、そんな友人の姿を見て、うらやましい気持ちが押さえられなかったJさん。

「僕も何かをモノを作る仕事をしてみたい」

 今の仕事のように、モノを売るだけでは物足りない。溜まっていた不満の原因をそう解釈したJさんは、気がつけば、友人の転職先の企業について根掘り葉掘り聞いていたのです。

 すると、数日後、この友人から連絡がきました。

「おまえ、転職する気ない? うちの会社で手が足りていない部署があって……」

 友人が転職した企業は、現在、事業を拡大中。技術者に限らず「いい人がいたら、ぜひ紹介してもらいたい」と、社員に声をかけているのだとか。

 Jさんが販売の仕事に不満を抱いていたことを覚えていた友人は、もし興味があれば、と電話をくれたのです。

 渡りに船とばかりにJさんは、早速詳しい話を聞かせてほしいと返事をしました。

サプライズ・ゲスト

 ふたたび友人と会うことになったJさん。待ち合わせ場所の居酒屋へ向かう直前に、携帯にメールが届きました。送り主はその友人。

「今日、上司も一緒に行っていい?」

 突然のことだったので、あわてたJさん。

「とりあえず話を聞くつもりだったから、何も用意してないよ! 無理だよ」

 と断りましたが、

「大丈夫、大丈夫。面接とか、そういう正式なのじゃないって。俺が今日詳しく話をするって言ったら、一緒に行きたい。顔見たいって言うからさぁ。何も準備はいらないし。ていうか、もう上司と一緒に会社を出ちゃってるんだよね」

 とのこと。

 かくして、一杯傾けながら友人に“転職相談”のつもりが、急転直下、転職先になるかもしれない企業の社員との非公式面接のようになってしまったのです。

 また、さらにJさんを驚かせる出来事が待っていました。友人と共に現れた女性の“上司”とは、なんとその企業の社長だったのです。

 名刺を見て愕然とするJさん。

「驚かせてゴメンナサイね。どうしても気になっちゃっていてもたってもいられなくって。人事権は私が持ってるので、直接話した方が早いんですよ」

 とニコニコ笑う社長。その影で友人は申し訳なさそうに小さくなっていました。

 後で社長が中座した際、社長の手前遠慮していた友人のフォローが初めて入りました。

「まだ小さい会社だから、社長のフットワークが良くってね。バイタリティもある。社員と一緒に行動するのが好きで、仲間意識が強いんだ。社員の何割かは、社員の紹介で入ったんだよね」

「へぇ」

「社長は、ざっくばらんに人と会って採用を決めてきたみたいで、Jの話をしたらぜひ会いたいって言ってさぁ。だまし討ちみたいで悪いとは思ったんだけど、おまえのためにも、社長のためにも実際会った方がいいと思って」

 Jさんに転職願望があったことを知っていたからこそ、今回の行動に出た友人を責めることなどできません。

 予想外の展開とはいえ、ここまできたらこの“非公式面接”をキチンと受けよう! Jさんは意を決し、語り始めたのでした。

友人へ転職相談をするつもりが、女性の社長との面接となってしまったJさん。結局、彼女のフレンドリーな人柄に引かれ、転職を決意したのだが……。
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文・イラスト:
山本ちず

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