他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:62 帰ってこいよ(後編)

フランクな社長といきなり酒を飲む事になったJさん。簡単な面接が始まるのかと思いきや、社長は上機嫌でしゃべり続け……。

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上機嫌の社長

 友人に転職の実態を聞くはずの飲み会に、なぜか友人の会社の女性社長まで登場。

「うちはほーんとに、フランクなのよ! 最初はねえ、小さなマンションの部屋で始めた会社で……」

 女性社長は上機嫌で話し続けました。簡単な面接だと意気込んでいたJさんはすっかり拍子抜け。何を聞かれるのか、と身構えていたものの、突っ込んだ質問もなく、ただ社長の話を聞いただけで、その日は終了しました。

「あれはいったい何だったのか……」

 Jさんがいぶかしんでいると、友人から電話が入りました。

「社長がお前のこと、気に入ったみたいで、いつから来れるか聞いて欲しいって」

 トントン拍子というよりも、驚きの成り行きに戸惑うJさんでしたが、社長の熱心な申し出を最終的に受けて転職を決定しました。

 入社後、Jさんに最初に与えられた仕事は事務方の作業と開発フォロー。

 一日中入力作業をしていたり、WEBコンテンツのバグチェックをしたり、携帯片手に町中を歩き回るGPSの精度チェックをしたり……、といったことでした。仕事は、必ずしも面白いものではありません。

 その点は納得していたJさんでしたが、どうしても納得できない点がありました。それは待遇面。

 未経験職種への転職ということで、給与ダウンは想定済みでしたが、何とアルバイト待遇だったのです。年金などは自分で払わなければいけず、手取額は大幅にダウン。

 これに困ったJさんは人事に掛け合ったのですが、担当者には 「社長と話をしただけで、待遇面での詳細の確認をしなかったんでしょ」

と冷たくあしらわれました。

 また、社内にはJさん同様、社員のツテで入社した人が多く、中には曖昧なまま採用されて、曖昧なまま出社してこなくなる人もいるそうです。

 入社後に次々に分かるルーズな対応に、Jさんは早くも幻滅していました。

助けると思って

 新しい職場に移って7カ月目、Jさんのところへ前職の上司から連絡が欲しいとのメールが届きました。

 今さら何ごとか? と不安に思いながらも、上司の携帯に連絡をしたところ、

「君に辞められて大打撃でねえ。代わりの人間が間に合わず、新しい人を雇っても辞められて困っている。八方塞がりなんだ。僕を助けると思って戻ってきてほしい

 なんと復職の誘いだったのです。

「でも、一度辞めた人間が、そんな事出来るんですか?」

「あまり例は無いが、まったく無かった訳じゃない。ただあまりおおっぴらにする事ではないので、社員の間では知られてないだけ。それに今の人材不足を考えると、上もJ君の復職にNOとは言わないはずだ」

 元上司は今どれだけ優秀な人材がいないか、Jさんが抜けた事がどれだけ痛手かを繰り返し、愚痴を言い続けた。そして、

「その気があるなら、上に話を通しておくから、一度本社に顔を出してほしい。前向きに考えてくれないか」

 と締めくくったのでした。

 元々、販売の仕事が嫌になったのではなく、新しいことに興味が湧いてした転職です。転職先に幻滅している今、この申し出は思ってもいないありがたいもの。

 気まずい気持ちはあったものの、元上司に指定された日、前の会社の門をくぐりました。

 しかし、そこに待っていたのは、電話で話した上司ではありませんでした。

 人事部のあまり縁の無かった社員。

「あー、ハイハイ。一応話は聞いてますよ。復職したいんだって?」

「あの、人手が足りないって……」

「え? 今? 人手は足りてるよ

 と、けんもほろろな対応。

 上司の言っていた話とは、まるで違います。「上司と一度話をさせてくれ、会わせてくれ」とJさんは訴えましたが、

「今、いません」

 の一点張り。

 本当にいないのか、人事が難色を示し、上司は遠ざけられてしまったのか、はたまた自分から誘ったものの、不首尾になって上司が逃げてしてしまったのか……。

 不信感と屈辱感を抱き、結局、Jさんは古巣を後にしたのでした。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

案外多い出戻り

“出戻り”を受け入れる企業は意外にあります。慢性的に人手が不足している会社では、出戻り後任をうたい、積極的に呼び戻しをかける場合もあります。後ろ足で砂をかけるように辞めたのならともかく、円満退社をしていたのであれば、納得のいかないことについて、交渉の余地はあるでしょう。まずは、元の上司など信頼できる人に相談を持ちかけるなどすれば、不満は大分解消できるでしょう。

これでサクセス!

出戻り採用のメリット・デメリット

企業が“出戻り”を採用するメリットは、新しく人を雇うより教育にかかるコストがかからないことと、即戦力として生かせることです。また、外の企業を知ってから戻ると、かつては嫌々ながら行っていた仕事も納得して取り組むことができるでしょう。ただ、他の社員のモチベーションが下がるといったデメリットもあります。企業によっては“出戻り”に対し、希望する部署とは違う部署に配属するなど、試練を強いるような待遇を提示することもあるようです。

文・イラスト:
山本ちず

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