他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:65 STOP! 大量退職(前編)

 人の出入りが激しいA社では大量採用・大量退職が当たり前。この状況を良しとしないIさんは、新人研修の改善を提案するが……。

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イラスト1

「退職-採用」のいたちごっこ

「人の出入りが激しい職場は避けましょう」

 転職指南書には、よくこういった記述があります。頻繁に採用を行っている企業は、何らかの問題があり、社員の定着率が低いことが多いからです。

 『多くの人が辞める=労働環境が良くない』という認識は一般的です。しかし、教育関連企業のA社は大量雇用・大量退職が当たり前で改善を試みる様子はまったくありませんでした。

 A社は毎年数十人単位で新卒者を採用し、中途採用も通年実施しています。

 というのも、A社での業務は異常にハード。長続きする人が少ないので、はじめから辞めることを想定して、多めに採用していました。

 採用者は半年間厳しい研修を受けて、これを終えてやっと正社員採用になるのですが、半数は研修期間の途中で脱落します。

この実態を採用する側は、

『どうせすぐに辞めるんだ。最初から正社員にする必要はない』

 と考えていました。しかし転職者は、

『やっと就職が決まったと思ったのに、まだ選考が続いているようで、本来の業務に打ち込めない。それに仕事がこんなに大変なのに待遇はひどく悪い』

 と、嫌気がさして辞めてしまうことはしょっちゅうでした。

『最初から正社員採用にしないのは、採用する側にとっては面倒な業務を省く措置であり、応募者側にとっては嫌になったらすぐに辞められる環境だ。だから両者にとって良いのではないか』

と考えられていました。

しかし、実際には辞める人が異常に多く、A社の採用と退職はいたちごっこになっていました。

心が折れる採用現場

イラスト2

 こんな粗雑な大量採用に心を痛めていたのが、最近異動で人事担当になったIさん。

 採用活動中はヤル気を見せ目を輝かせていた多くの応募者が、入社した途端に現実を突きつけられ

辞めていくのを見て

『こんな採用を続けていても会社に成長はない。このままでは自分の心までもが折れてしまう……』

 と危機感を感じていました。

『辞める人数を減らせれば、こんな荒っぽい採用は止まるかもしれない』

 そう考えたIさんは新人研修の改善を提案しました。

 画一的な研修をやめ、それぞれのレベルに合わせて進めていく。経験者や有望な人は早めに研修を修了させて現場に出し、逆に未経験で転職してきた人に対しては、社会人としての基本や仕事の基礎から教えていく。さらに研修期間を短くして正社員として早めに囲い込む、

といった内容でした。しかし、

「ウチの会社にそんな手の込んだ研修が出来るほどのマンパワーはない。どうやったって辞めるヤツは辞めるだろう」

 と上層部は却下。

 結局、毎月採用した新人を経験の有無に関係なく同じ研修を受けさせて、一斉に現場に出す方式は変わりませんでした。

 それでも、Iさんは個別のケアは絶対に必要だという考えから、

「何かわからないことはない? 心配していることは? いつでも気軽に話して」

 と、個人的に中途採用者に声を掛け続けました。

 しかし、こんなIさんの心遣いを無にする出来事が起こったのです。

個人的にではあるが、採用者個々のケアをしようと努力するIさん。だが彼らにIさんの気持ちは届かなかった……。
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文・イラスト:
山本ちず

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