他人の失敗から学ぶ転職裏マニュアル 転職失敗談集3

FILE:68 残業のない会社(後編)

多少のハードワークを覚悟で入社したOさんだったが、実際は毎日定時上がりで、バリバリ働かされることもなかった。これには、ある事情があった!

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響きわたる足音

 残業を覚悟して入社したOさんでしたが、実際に入社すると、毎日定時帰り。周囲の同僚たちはOさんに残業をさせたくない様子でした。

 ある日の昼休み、Oさんは同僚と昼食に出たのですが、途中で財布を忘れてしまいました。

「すいません、財布忘れたんで戻ります。ああ、時間があまりないですね……。今日はコンビニで弁当を買って済ませちゃいます」

 そう言って、ひとり会社に戻りました。

 そしてコンビニで弁当を買い、戻ったOさんは、異様な風景を目にしました。

 オフィスで食事を済ませた同僚たちが、我先にと外へ出て行きます。

 一方、残った数少ない社員は皆、机に突っ伏して昼寝を始めたのです。

「Oさん、ご飯食べ終わった? じゃあ、電気消すね」

バチン!  箸を置くやいなや、オフィスの電気は落とされてしまいました。

「Oさんもする事ないんだったら、昼寝でもした方がいいよ」

 本でも読もうと思っていたOさんでしたが、どうやら強制的なお昼寝タイムのようです。ここまでされては仕方ないので、周りに合わせて、うたた寝を始めました。でも、なかなか眠れません。しばらく狸寝入りのまま突っ伏していると、静まり返る中、足音が近づいてきました。

コツ、コツ、コツ、コツ、コツ……。  足音がドアの前で止まると、ドアを少し開けて中をうかがっている様子。しばらくすると、足音はまた遠ざかっていきました。

「行った? もう行った?」

 同僚の一人がおもむろに顔をあげました。

「誰ですか? 今のは?」

「えっ、今の? 専務だよ!」

新風を起こしてほしかった

 同僚の話によると、専務は典型的なワーカホリックで、「がむしゃらに働くことが良い」と考えている人でした。手があいている人、ノンビリしている人を見つけると、必ず仕事を言いつけるのだとか。

 ひとたび専務と関わると、食事もそこそこ、休憩もとれず、帰宅は深夜という激務が待っているそうなのです。だから昼休みは外に逃げるか、オフィスで食事をする人は、食後昼寝をして専務から逃げるという暗黙のルールが出来上がっていました。

「Oさんも気をつけた方がいいよ。ノンビリしていると専務に捕まるから」

「そうそう。みんな昼寝を始めてから、専務のターゲットは隣の部署に移ったんだよね。Oさんは今が大事な時期だから、注意してね」

 ようやく、入社以来の謎がとけました。

 そんなある日、Oさんは人事部から呼び出しを受けました。表向きは入社後のフォロー面接でしたが、実際はOさんへの叱責でした。

「採用前、あなたは残業は問題なくできる、と言っていましたね。実際はいかがですか?」

「それは……」

「専務も新入りのあなたに期待していたんですよ。どうもウチの職場はぬるま湯というか……。今ひとつシャキッとしたところがない。だから、Oさんが入ってバリバリ働いてくれることが、良い刺激になるんじゃないかと思っていたんですがねえ……」

 どうやら、専務は自分の思う通りに動かない社員に業を煮やし、積極的な姿勢のOさんに社の流れを変えてもらいたいと期待していたようです。

 ところが、予想に反してOさんはすっかり職場に溶け込んでしまって、それほど頑張ってはいません。

「今後は専務の期待に沿うよう、頑張ってください」

 そうは言われたものの、困り果てるOさん。

「入社したばかりの自分に部署を変える力は無いし、今まで親身になってくれた同僚を裏切るようで……」

 悩んだあげくOさんは中道路線を取る事にしました。昼休みは休み時間なので同僚といっしょに昼寝。ただ定時後は状況次第で残業を積極的にこなす。これが自分なりに納得して導き出した対応策でした。

 しかし、周囲にOさんのやり方は受け入れられず……。

「せっかく専務の“魔の手”から逃れられそうなのに、Oさんは、どうして足並みを乱すの?」

 と同僚からは不満をぶつけられ、また専務からは、

「周りの刺激になるどころか昼休みは一緒になって昼寝をしている。まだまだ本気で仕事に取り組んでいないな」

 と辛口評価。

 こうしてOさんは徐々に孤立していったのでした。

転職サクセスワンポイント講座

今回はココが問題!

板挟みの転職者

採用責任者と現場の声にズレがあった場合、転職者が両者の間に立たされる事態はしばしば起こります。特に中途採用者を投入することで、現場に刺激を与え、良い意味で競争が始まる、と期待する担当者は少なくありません。日々の就業を優先し、顔を合わせる周囲に馴染むことを優先するか、それとも上司からの期待に応え、周りからは憎まれ役を覚悟するかの判断は難しいところです。

これでサクセス!

判断の決め手は

人間関係に問題がある職場の場合、組織や人間関係に流されてとった行動は、“その場しのぎ”でしかありません。どのようにすれば、自分自身のキャリア構築に有効かを考えた上で、行動を決めていくべきでしょう。

文・イラスト:
山本ちず

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