海外キャリアの歩き方
世界各国で頑張る日本人ビジネスパーソンのキャリアリポートをお届け。文化も慣習も違う海外で働く人々のパワーを感じ、アナタのシゴトに生かそう! 第16回 スイス連邦 松金 康恵さん

スイス連邦世界に通用する仕事で活躍したい!
体力と言葉の壁を克服し、今日も美味しいパンを作る

「新しいことは、いつ始めるかということより、それをどれだけ続けるかということの方が大切だと思うんです」。松金康恵さんは、今年7月、パン職人として最難関のドイツのマイスター試験に合格し、新たな一歩を踏み出した。

 1998年、26歳の松金さんは結婚を機にドイツへ移住した。ドイツでの暮らしが始まり、将来のことを考えたとき、「好きなことを仕事にしたい。夫の転勤でどこへ行っても、世界各国で通用する職業に就いて、活躍したい」と思うようになった。そんな彼女の目に留まったのは、世界的に有名なドイツのパンだった。

「ドイツのパンって、種類が豊富で本当に美味しかったんです。料理好きだった母の影響もあって、是非パン作りをやってみたい!と思いました」

 はじめは、カルチャー・スクールに通うような気持ちでパン作りを習おうと思っていた 松金さん。しかし、ドイツにはパン作りのカルチャー・スクールの存在などはほとんどない。パン作りを習う場合はマイスター(=親方/マイスター試験に合格した職人)のいるパン屋に弟子入りするくらいしか方法がないのだ。しかも、仕事にするには、パン職人の資格が必要となる。その取得には、3年間の修行と同時に週1回の職業訓練学校で理論を学ばなければならない。

「パン作りの世界を知ったら、ひるむどころか、やる気が湧いてきたんです。よーし、やってやろうじゃない!って」

 早速行動に移った松金さんは家の近くのパン屋のマイスターに直接、話をして弟子入り。3週間の試用期間の後、彼女のやる気が認められ1999年8月、晴れてレアリングと呼ばれる修行生となった。
松金 康恵さん
PROFILE

パン職人(マイスター)
松金 康恵さん(33歳)

1973年生まれ。1998年11月ドイツへ移住。パン職人になるための修業期間を経て、2001年ドイツのパン職人の国家資格(ゲゼレ)を取得。その後、2002年からスイスのツーク州に移住。3年半、「Migro(ミグロ)」のパン部門にてパン職人として勤務後、2006年7月ドイツのパン作りの資格試験、マイスター試験に合格。現在もスイス・ツーク州で、パン作りを続ける。

スイスの職場の同僚

スイスの職場の同僚と工房にて。
康恵さん以外は全員男性

「職業訓練学校も、工房もドイツ語だったので、日本語より数倍集中力が必要でした。図書館から本を借りてきて予習、復習を徹底的にしましたよ」

 順調に滑り出したものの、修行生となって、1カ月後に難関が訪れる。パン作りの仕事は20キロ、30キロのものを運ぶことも日常茶飯事。毎日の肉体労働、勉強、そして家事で体調を崩してしまったのだ。

「弟子入りした頃にマイスターからも念を押されていたんですけど……。機械はヨーロッパの男性用に作ってあるので、日本人で女の私にしてみれば大きく、とても重いんです。それに夜中の1時、2時に起きるという生活に慣れなければいけませんでしたし、修行生として、まだまだ緊張していた部分も多くありましたからね」

 それでも工房での仕事や学校での授業、実習は楽しかった。ドイツという国柄か、言いたいことはハッキリ言えるし、意見も尊重してもらえた。弟子だから、という理由で意地悪をされることはなかった。学校でも工房でも、質問したら必ず誰かが丁寧に答えてくれる。たくさん質問をし、許される範囲で色々なことに挑戦することは意欲の表れとして、とても歓迎された。

 修行を終え、2001年、ドイツのパン職人試験に合格。晴れてパン職人(ドイツ語で「ゲゼレ」)となった。その後、2002年、夫の仕事の関係でスイスのツークへ移住。ここでもパン職人としてスイス人男性に混じり、パンの生地作り、成形、焼き、仕上げのすべてに関わった。ベーカリー部門で働いているのは15人。7人がパン職人、3人がお菓子職人、5人がアシスタントとして働いている。平日は朝の3時半〜12時過ぎ、金曜日と土曜日は朝の1時〜11時が勤務時間だ。週休2日で、日曜日と平日に1日休日がもらえる。

「朝の休憩時間には、スイスの代表的なカード・ゲーム「ヤス」を同僚たちと楽しんでいます。同僚たちは皆、40代で、もうすぐ定年を迎える人が多いのですが、和気あいあいとしていて、とても楽しいですよ」

 ゲゼレとなってから約3年半が経った。職人としての経験を積み、今年、2006年にはマイスター試験に合格。これからはパン職人であると共に、弟子を育てていくマイスターとしても活躍できる。

「将来はマイスター・コース(マイスター試験を受けるための準備コース)で一緒に頑張った女性と一緒に、お店が開けたらいいな、と思っています。ドイツかスイスか、どこでお店を開くかは決めていませんが、1つひとつの仕事を丁寧に、少しずつ前進していきたいですね」と笑顔で語ってくれた。

取材/文 大野・エグル・瑠衣子

ここが困った海外生活

 ヨーロッパに来て一番困ったのは、各イベントのプレゼント探しです。こちらは、子供だけではなく、すべての親しい人にプレゼントを渡す習慣があり、義理の両親、兄弟、従兄弟、友人たちに贈る機会が、誕生日とクリスマスだけでそれぞれ年2回。初めのうちは、花やお菓子、洋服、雑貨、家庭用品などを楽しく選んでいたのですが、何年も繰り返すと、プレゼントに適当な品物の種類は尽きてしまいます。しかも、手作りのものや相手の趣味に関係するような気の利いたプレゼントが喜ばれるので、ただお金を掛けただけではダメ。日本ではご祝儀で済む結婚式なども、プレゼントを贈るのが主流です。もう、何を贈るか考えるだけで疲れが……。

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