海外キャリアの歩き方 海外キャリアの歩き方
海外キャリアの歩き方 第20回 オーストラリア連邦 大和田 ゆみさん

オーストラリア連邦日本で積み上げたキャリアを生かし
実力でつかんだ白衣の技術職

「趣味のボディーボートを通して、海をきれいにする仕事に関わりたいと考えていました。学生時代に訪れたハワイの海に感動した後、地元の横須賀の海の汚さに愕然としたんですよ」  大学卒業後、大和田ゆみさんは日本で水質検査などの環境分析の仕事に就いた。働き始めた時は、ちょうど環境ホルモン問題が注目を集め、「ダイオキシン法」が制定された頃。連日のダイオキシン報道が過熱する一方で、環境分析の現場は技術的に未熟な点が多い状態だった。仕事は多忙を極め、就職3年目には月120時間もの残業をしていた。

 目標に向かい勉強し、せっかくつかんだ専門職だったが、メディアの影響もあって、本来のクライアントへの対応が粗雑になっていく状況に、大和田さんは疑問を持ち始める。

「これではブームに踊らされてるだけ。海をきれいにすることにはなっていないと思ったんです」

 本来の目的を実現できず、過労で疲れ果てた末、退職した大和田さんは休養を兼ねて友人のいるオーストラリアを訪問。久しぶりに自然に癒され、のんびりとした生活を楽しんだ。そして滞在中、たまたま前職とよく似た職種の求人広告を見つけた。

「試しに応募してみたら、先方から連絡が来たんです! 就労ビザもなかったんですよ。これまでの私のキャリアがオーストラリアで通用する、評価してもらえるのだ、と分かっただけで、励みになりました」

 ここからオーストラリアでの就職活動が始まった。

「オーストラリアで就職を目指すなら、現地の環境の事情を知っておかなければと思い、まずは留学して勉強することにしました」

 いったん日本に戻って留学資金を貯め、3年後にシドニーのマッコーリー大学に留学。ポスト・グラデュエイト・ディプロマ課程で1年間環境学を学んだ。そして卒業後の2004年に、スキルマッチング制度(※)を利用し、ビクトリア州のスポンサーシップを得て、同州での就労が条件となる永住ビザを取得した。そして、住み慣れたシドニーからメルボルンに移り、環境に関わる仕事を得るために就職活動を開始した。

「専門職への就職は難しかったですね。就職活動はかなり長引きました」
大和田 ゆみさん
PROFILE

AgriQuality、分析検査技師
大和田 ゆみさん(33歳)

1973年、神奈川県横須賀市出身。大学卒業後、日本での環境分析の仕事を経て1999年に初渡豪。その後、日本で資金を貯めた後に、シドニーのマッコーリー大学で環境学を学ぶ。2004年に永住ビザを獲得し、2年後に念願の技術職に就く。就職活動中は映画「オンシン不通)」の製作スタッフとしても活躍した。

カフェ

就職活動中にアルバイトをしていたカフェ。エスプレッソもお手の物

 当時、大和田さんはアルバイトをしながら就職活動を続けていた。なかなか就職が決まらず悩んでいたが、2006年、ビクトリア州政府が技術永住者の就職支援のために設けた就活プログラムに参加。4週間のプログラムで履歴書作成や面接指導等のノウハウ伝授に加え、短期企業研修も組み込まれている。ここでチャンスを逃すことなく、AgriQualityという分析会社で見習い研修から、カジュアルスタッフ(契約社員)として採用された。

「ものすごく嬉しかったです。採用が発表された時に友人や同僚が温かく祝福してくれたことは今でも忘れられません」

 大和田さんの当初の担当は食品部門の乳製品の分析だった。

 「食品部門は未知の分野でしたが、環境分析と類似している点も多く、仕事は楽しかったです。英語がそれほど得意ではないので、言葉で説明できないときは化学記号を書いて何とか伝えていました。会社の方々がとても親切なので、ここまで頑張れたんですよ」

 実績を認められ、2006年8月にカジュアルスタッフから正社員に昇格した。更に、その3ヶ月後には日本での経験を買われて水分析部門への異動を果たした。上司の信頼を得て任される仕事量も多くなり、忙しくも充実した日々を過ごしている。目の前の仕事をこなして、着実に前進してきた大和田さんは、オーストラリアでつかんだ新しいキャリアをしっかりと築き上げている。

※スキルマッチング制度:独立技術永住ビザ取得に必要な合格点に満たない次点者が、オーストラリアの州や準政府、あるいは雇用者のスポンサーシップを受けて永住ビザを取得できる制度。人材不足の地方や業界に必要な技術を有する人材が選出される。

(取材/文)緑ゆたか

ここが困った海外生活

 オーストラリアでは終業時間きっかりに帰宅する人が多く、正当な理由がなく自主的な残業はしづらい雰囲気です。ほんの少し残っていても、「なんで残っているんだ? 早く帰りなさい!」 と上司に叱られます。中途半端に仕事を明日に回してしまうと、機材の準備などの時間が余計にかかるので、キリのよいところまで仕事を片付けてしまいたいと思いますが、この考えはここでは馴染みません。
 仕事でよく天秤を使うのですが、性能の良い機種は常に順番待ちです。混雑を避けて朝一番に使えるように準備して、時間を有効に使って仕事をしたいのに、なかなか自分の思うように進めることはできませんね。

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