海外キャリアの歩き方 海外キャリアの歩き方
海外キャリアの歩き方 第25回 宿&ギフトショップ&カフェの経営者 若目田尚美さん

トルコ共和国日本で培った“センス”を生かし
『ナチュラル・イズ・ベスト』の精神を貫く

「久しぶりにどこか遠いところに旅をしたかったんです」

 高校の美術講師を経て、食品のサンプル作り職人をしていた若目田尚美さん。しかし好きな旅行ができないこともあって修行を中断。チケットの安さに惹かれ深く考えることもなくトルコへの旅行を計画した。ここで若目田さんの運命が切り拓かれていくことになる。

「トルコの人たちは親日的でどこへ行っても温かく迎えてくれます。生活に宗教が根付いているからでしょうか、何か大きなトラブルがあってもトルコの人は、これは『運命』と割り切ってしまうんです。反対に嬉しいことがあれば神に感謝する。私は『ナチュラル・イズ・ベスト』と信じているので、トルコはぴったりの国だと思っています」

 トルコに来てから1カ月があっという間に経ち、いよいよ帰国するという日。若目田さんは、バスでイスタンブールの空港に向かった。だが道は事故のために渋滞し、予定の飛行機の搭乗には間に合いそうにない。だがこの時、若目田さんは不思議と落ち込まなかった。

「もし間に合わなかったら『運命』だったんだと思うことにしました。この時はすでに現在の主人のファティにも出会っていましたし。飛行機のチケットはいつでも買える。トルコを勝負の地と思ってできる限りの挑戦をしてみようと決心しました」

 結局、フライトには間に合わず、若目田さんは、そのまましばらくトルコに滞在することになった。

 ご主人のファティさんは絨毯で有名なトルコ内陸部のカイセリ出身。絨毯について詳しく、商売への目処も立っていたので、イスタンブール市内に小さな店を構えた。

「小さい店といえども最初は大変でしたね。資金もギリギリで、品数も少なくて……。店内はガランとしていました。それで絨毯を折る回数を増やしたんですよ。嵩張って、品数が多く見えるから(笑)」

若目田 尚美さん
PROFILE

宿&ギフトショップ&カフェの経営者
若目田 尚美さん(43歳)

1964年生まれ。埼玉県出身。大学を卒業後、高校の美術講師、食品サンプルつくりの職人を経験。退職後のトルコへの旅行で現在のご主人であるファティさんと出会う。二人三脚で小さな絨毯屋の経営を始め、その後始めた宿「TREE OF LIFE GUEST HOUSE」も旅行者の間で話題を呼ぶ。2002年に結婚。2004年にはギフトショップ兼カフェ「TREE OF LIFE Cafe」をオープン。一昨年に娘が誕生し、現在は一児の母としての顔も持つ。

Tree of Life

トルコのおみやげと言えば絨毯。店名のTree of Life(命の木)はトルコ絨毯の伝統的モチーフのひとつに由来している

 さまざまな工夫を凝らし、売上げは徐々に上がった。そんな折、たまたま観光スポットのスルタン・アフメット地区に良い物件を見つけ、そこで建物そのものを借りてほしいとオーナーから言われた。

「1年間くらいは、1階に新しい店舗を構えつつ、他の階の用途を考えていましたが、旅仲間がよくイスタンブールに遊びに来ることから、宿にしようと決心しました」

 こうして、2000年にドミトリー式のゲストハウスをオープン。最初は看板も出していなかったが、若目田さんはさまざまなアイデアを出していった。その筆頭が、旅行客が共同で夕食をつくる“シェア飯”。これは、買出し係、料理係などの分担を決めて、皆で食事を用意し、かかった材料費は割り勘にする。後片付けはジャンケンで決めるのだが、このポイントが『勝った人』が洗うという点。もちろん参加は個人の自由だが、“シェア飯”を通して、見知らぬ旅行者同士の交流が深まる。こうした工夫がバックパッカーの間で話題になり、今ではイスタンブールの有名宿になった。昨年は、ここで知り合った旅行者から『結婚』の知らせが入り、大阪の挙式に駆けつけたそうだ。

 そして2004年には宿に加え、ギフトショップ兼カフェをオープン。トルコにはこのような形態の店が他にないという。

「世界中の旅行者を見ていると、夫婦の場合はたいてい奥様が買い物に夢中でご主人は手持ちぶさたで困っているんですよ。もしそこにカフェがあれば、お茶を飲みながらゆっくり待っていてもらえるのではないか、と思いました」

 若目田さんは商品の買い付けや店のデコレーションなどを担当。かつて美術講師や食品サンプル職人で培ったセンスや経験を生かしている。そして、ご主人のファティさんは経理を担当し、経営面で店をしっかりと支えている。

「これまで主人と足並みを揃えられていることが成功の秘訣だと思いますね」

 一昨年に、長女アカシアちゃんを出産。これまでの仕事に加え、今は子育てにも力を注ぎ、以前にも増して充実した毎日を送っている。

(取材・文) 梅本昌男

ここが困った海外生活

 イスタンブールは道路舗装がきちんとされていない点が不便。歩道は段差が激しかったり、穴があいていたりで、バリヤフリーの概念はほとんどありません。子供が生まれてからベビーカーを押して街を歩くことがあるのですが、すごく疲れます。公共の交通機関も問題だらけ。電車やトラムは中長期的な計画を見込んだ工事がされていなかったので乗り継ぎの勝手がすごく悪いんです。同じ駅名なのにバスに乗らないと行けない距離にあるとか……。
 また、数年前に「アクビル」という日本の「Suica」のようなプリペイドキーが登場し、市内の全交通機関で使用可能なシステムができました。でも、キーの在庫がなかったり、お金をリチャージする窓口が少なかったりとトラブルは耐えません。

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